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シアタートラムで『月を抱く人魚 ―雨月物語より―』(作:上田秋成、脚本:鈴木アツト、演出:生田みゆき、出演:岡本圭人、南沢奈央、薬丸翔、鈴木結里、上村聡、松岡依都美、相島一之)を観た。
雨月物語の『青頭巾』を現代劇に脚色した芝居だと聞いていたので、事前に『青頭巾』の現代語訳を読んだ。短い話なので原文にも目を通した。徳の高い住職が稚児に溺れたのが契機で人食い鬼になる話で、最後は旅の僧によって成仏させられる。この話をどう料理すれば現代劇になるのか見当がつかない。
冒頭に登場するのは日本画家宮木(南沢奈央)と絵画モデル勝四郎(岡本圭人)である。画家は人魚描きで、派遣されたモデルの背中に背びれを描く。ふざけあいジャレあった二人は一夜を共にする。画家の部屋でモデルが目覚めると、画家は失踪していた。画家を忘れられないモデルは、友人のカップルの二人共に画家の行方を捜す。
モデルが男性、画家が女性という設定は現代的だ。モデルの友人カップルは、男がウーバーイーツの配達員、女は占い師である。これも現代的なのだろうか。
舞台は稚児愛の話ではなく、男女や家族の愛憎の話になっている。人食いの話は出てくる。人魚のモチーフに唐十郎を多少感じた。お話の背景に、遠い昔から現代にまで続く戦争状況を設定している。
モデルと友人二人の三人は現代に生きる人間であり、この芝居は三人の冒険譚である。冒険の始まりに登場するモデルの父親は息子を捨てた戦場カメラマンで、彼ももちろん人間だ。だが、その後に三人が出会う怪しげな人物は、画家をはじめ皆この世の者ではない。信長の安土城の時代から彷徨っている妖怪のような存在なのだ。
この芝居はかなり入り組んだ話になっていて、それを十分に理解できたわけではないが、現代の怪談になっているのは確かだ。
ラストで、妖怪たちの屋敷は消滅し、その跡に三人がたたずむ。雨月物語的である。妖怪が消滅しても、その気配が完全に消えたわけではなく、かすかなコミュニケーションのルートが残されているように見える。
現代世界の背後に妖怪たちの異世界がある――現代の怪談はそう語っているのだろうか。
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