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下北沢の小劇場楽園で山の羊舎公演『メリーさんの羊』(作:別役実、演出:山下悟、出演:山口眞司、清田智彦、白石珠江)を観た。別役劇である。戯曲は未読だが、鉄道模型が「メリーさんの羊」を歌いながら走る芝居だと聞いた気がする。
小劇場楽園は50程の客席が角度90度で二つに分かれ、四角い舞台の2辺が客席に面している。変形舞台だが、客と役者の距離が近いのが小劇場ならではの魅力だ。
舞台には大きな食卓があり、紅茶のカップやポットなどがやや雑然と置かれている。食卓の上には鉄道模型のレールが敷かれ、列車が周回している。駅員の服装をした高齢の男が現れ、笛を吹くと列車は止まる。この男が主人のようだ。しばらくして、トランクを持った旅行者風の若者が登場する。
主人の男は元駅員である。男と若者のおかしな会話で芝居は進行する。男は多くの死者が出た過去の重大鉄道事故の思い出を話す。鉄道模型の駅にホームに立つ人形と現実の人間が錯綜してくる。不条理劇というよりはミステリーに近い。
模型の列車が走るテーブルの上の世界は、男の脳内世界が外部化されたように見えてくる。それは牧歌的なメルヘン風景の世界であり、そこに不気味な情景が二重写しになる。夢幻の世界とはこんな世界だという気がしてくる。
模型の列車がメリーさんの羊を歌いながら走るシーンはなかった。私の勘違いだったようだ。若者が去った後、テーブルの上を周回する列車を眺めながら、男はメリーさんの羊の冒頭を低く口ずさむ。
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