『カラカラ天気と五人の紳士』は余韻ある不条理劇
2024-04-07


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三軒茶屋のシアタートラムで『カラカラ天気と五人の紳士』(作:別役実、演出:加藤拓也、出演:堤真一、溝端淳平、野間口徹、小手伸也、藤井隆、他)を観た。別役実の不条理劇である。

 別役ワールドと言えば電灯が下がった電信柱が一本の舞台、本作もそんな世界だが、少し具象的になっている。舞台は地下鉄駅構内のような空間、電信柱の代わりに太い柱が立っている。ノスタルジーではなく現代的な別役ワールドに転換されている。

 舞台奥(改札口?)から棺桶をかついだ紳士5人が登場する。棺桶は懸賞のハズレで得た景品である。1等景品は青酸カリだったそうだ。ハズレ景品の棺桶は組み立てキットで、説明書通りに組み立てたばかりだ。せっかくの棺桶だから、だれかが死んで利用しなければもったいない――という導入である。ナンセンスコメディの設定が面白い。

 何ととなく棺桶に入ることになった紳士は電信柱に登ったまま降りられなくなる。そこに、ショッピングバッグを引いた女二人が登場し、地面に敷物を広げる。駅構内には点字シートが敷かれている。女二人は敷物に邪魔な点字シートを剥がして投げ捨てる。その豪快さに驚いた。
 
 シートにはにバッグの中身が並べられ、にぎやかで不条理な会話が繰り広げられる。女は懸賞の一等の景品の当選者である。かみあわない会話の果て、女二人は敷物の上の品物を残したままドタバタと去って行く。
 
 渇き切ったカラカラ天気の世界に取り残された五人の紳士たちのナンセンスな会話は「死を待つという状態」にある人間存在に収れんしていく――そんな印象が残る70分の不条理劇だった。
[演劇]

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