渡辺えり作・演出『私の恋人』は3人30役の音楽劇
2022-07-05


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本多劇場で『私の恋人 beyond』(原作:上田岳弘、作・演出:渡辺えり、出演:渡辺えり、小日向文世、のん、他)を観た。渡辺えりの舞台を観るのは初めてだ……と言いたいが、40年前(1982年)にパルコ劇場の『少女仮面』に主演したのを観ている(当時は渡辺えり子)。だが、劇団3〇〇の舞台は観ていないし、彼女の作・演出の芝居がどんなものかを知らずに今日まできた。だから、気分としては渡辺えりの舞台初体験である。

 67歳になった渡辺えりは元気溌剌だった。『私の恋人 beyond』はかなり入り組んだ音楽劇で、目まぐるしい展開に目を奪われた。想像していた以上に複雑な構成で、わかりやすくはない。

 この芝居の原作は上田岳弘の小説(三島賞受賞作)である。私はその小説を読んでいない。小説を読んでいればもう少しわかったかもしれないが、渡辺えりの創作が8割だそうだ。この芝居は初演が3年前で、再演に際して「beyond」を付加したようだ。観劇後、ロビーで販売していた台本を購入した。いまひとつ掴み難い芝居だったので、台本で内容を確認したくなったのだ。観たばかりの舞台を反芻しながら台本を読むと、多少は見晴らしがよくなった。

 この芝居は3人の主役が30の役を演ずる。一人十役である。休憩なしの1時間50分の間、舞台上でめまぐるしく役が変化していく。

 現代に生きるフリーターが、自分の前世は「私の恋人」を追い求めるクロマニョン人やアウシュヴィッツのユダヤ人だと信じている……そんな設定だから、舞台上の時間は10万年を行き来し、一人の役者にさまざまな人物が憑依する。火星人の漬物まで登場する。何とも不思議な舞台である。
[演劇]

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