花園神社で往年のテント芝居『蛇姫様』を観た
2019-06-17


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新宿・花園神社境内で新宿梁山泊のテント芝居『蛇姫様 わが心の奈落』(作:唐十郎、演出:金守珍)を観た。1977年に状況劇場・紅テントで上演された芝居である。

 私は1977年に青山墓地の紅テントで『蛇姫様』を観ている。社会人5年目で、私が観た状況劇場の芝居ではかなりの後期になる。客演・清川虹子という意外性を憶えているだけで内容は失念している。

 新宿梁山泊の芝居を観るのは初めてである。『蛇姫様』を観ようと思ったのは出演者に大久保鷹と大鶴義丹の名があったからだ。

 往年の紅テントの怪優・大久保鷹の姿は、昨年末「Space早稲田」でほぼ半世紀ぶりに観た。元気なうちにもっと舞台上の姿を観ておこうと思った。唐十郎と李礼仙の血を引く大鶴義丹が父親の芝居をどう演ずるかにも興味がわいた。

 そんな役者への関心とは別に、観たはずなのに内容が頭に残っていない芝居を再度観れば記憶がどの程度よみがえるだろうという、己の頭への関心もあった。

 で、2時間50分の観劇の結果、悲しいかな記憶のよみがえりはほとんどなかった。初めての芝居を観ている気分だった。とは言え、現代の若い役者が往年の役者のイメージに重なってくる。この役は根津甚八だった、この役は李礼仙だったとわかる。清川虹子が演じた役もわかるし、大鶴義丹が往年の唐十郎の役を演じているのもわかった。その他はよくわからなかった。

 帰宅して古い記録(『写真集 状況劇場全記録』)を調べてみると、今回、大久保鷹が演じたのは1977年の天竺五郎の役で、往時の『蛇姫様』に大久保鷹は出演していない。すでに状況劇場を退団していたのだと思う。

 でも、年は取っても大久保鷹にはいまもフワリ・ニヤリとした独特の雰囲気がある。

 今回の台本が往時の台本にどの程度忠実なのかは知らないが、在日韓国人の「帰化」が明確に芝居のベースにあるのが意外だった。李礼仙を擁する状況劇場が1970年前後の日韓の問題にさらされていたことは知っていたつもりだが、「帰化」という言葉が『蛇姫様』のキーワードになっていたことをまったく失念していた。

 また、この芝居が紅テントらしいカタルシス的盛り上げでラストにもっていくという単純な形になっていないように感じられのも意外だった。
[演劇]

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