ヘロドトスに取り組まねばとの気分が高まる本
2018-04-01


禺画像]
中公版『世界の名著 5』のヘロドトスの『歴史(抄)』が意外に読みやすくて面白かったのでヘロドトスへの興味が高まり、次の本を読んだ。

 『アジアの原像:歴史はヘロドトスとともに』(前田耕作/NHKブックス)

 サブタイトルに「歴史はヘロドトスとともに」とあるのに惹かれたのだ。一般向けの歴史紀行的な啓蒙書だと思って読み始めたが、やや専門的で予備知識のない門外漢には少し難しい。だが、『歴史(抄)』を読んだ直後だったので何とかついて行けて、興味深く読了した。

 本書はヘロドトスを手掛かりにリュディア王国の形成から滅亡までを描いている。と言っても、そもそもリュディア王国って何だ? 高校の世界史には出てこない。ヘロドトスの『歴史(抄)』の前半にリュディアという地名やリュディア王という人物が出てきて、私は初めてこの王国の名を知った(他の本にも出てきたかもしれないが失念している)。本書によって、これまでぼんやりしたイメージしかなかったリュディアが多少明確になった。

 リュディア王国とは紀元前7世紀から前6世紀まで小アジア西端にあった王国で、紀元前547年にアケメネス朝ペルシアに滅ぼされる。リュディアというのは元来は地名のようで、王国滅亡後もリュディアという地名は使われている。

 ギリシアとペルシアの戦争を描いた史書だと思って読んだヘロドトスの『歴史(抄)』は、ペルシア戦役の記述は後半だけで前半はペルシアやエジプトの話だった。この前半部分に関して、私にはほとんど予備知識がなかったのだが、本書によって事後的に多少の知識を得ることができた。

 『歴史(抄)』の冒頭は、妻の容色が自慢の王が側近の部下に妻の裸体を盗み見させ、盗み見されたことを察知した妻は、その部下に王の殺害をそそのかすという印象深い物語だった。面白いけれどヘンテコな話だなあと思ったが、本書によってこれが王朝交代の重要な史実にまつわる話だと認識した。やはり、周辺知識や解説は重要だ。

 本書には、ヘロドトスの『歴史』に関する興味深い知見が散りばめれていて、抄録ではなく全編に取り組まねばという気分が高まった。それにはもう少し準備(地図、人名表、年表)も必要で、当面の読書計画には入れていないが…。
[歴史]
[本]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット