バルザックに引きずりこまれ『ウジェニー・グランデ』も読んだ
2017-11-06


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バルザックの『幻滅』を2冊にまたがる「世界文学全集」(河出のグリーン版)で読了し、2冊目の後半に収録されていた『ウジェニー・グランデ』(水野亮訳)を未読のまま放置するのも気持ち悪いので、ついでにそれも読んでしまった。

 2段組みで約200ページだから長編小説と言うべきだろうが、短編小説のような読後感だ。バルザックの濃密な世界に引きずりこまれた状態の頭で読むからそんな気分になるのかもしれない。

 フランスの田舎町(ソーミュール)を舞台に、吝嗇で守銭奴の資産家(元は樽屋の親方)の父親とその娘(ウジェニー・グランデ)を中心にした19世紀前半の約10年間の物語である。比較的シンプルなストーリーで登場人物もさほ多くはなく、途中からおよその展開が見えてくる。それ故に読みやすいし面白い。

 『ウジェニー・グランデ』は恋愛小説の形式をとった経済小説でもある。大多数の登場人物たちが金銭欲にまい進する姿にはあきれてしまう。社会を動かすエネルギーをそこに見出したのはバルザックの慧眼なのだろう。身も蓋もない物語のエネルギーを感じる。
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