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「すべての偉人は理想主義者であり、同時に、実践の人である」
「その時代の緊急を要する難問をみずから引き受けるところから偉人は生まれ、偉人の献身的行動は同時代の人びとに理解され、賞賛されることになる。死後百年たって発見された偉人などというものはありえない。この点が偉人と天才のちがうところだ」
「ほとんどの人は天才にはなれないが、偉人にはなれるかもしれない」
そんな偉人伝を子供だけに独占させるのはもったいないことであり、「偉人伝から学ぶべきはむしろ大人の方ではなかろうか」というのが、木原武一氏が本書を執筆した動機である。偉人伝は大人にとっても意義深いとの観点で木原氏が取り上げた偉人は次の10人だ。
シュワイツァー ヘレンケラー リンカーン ガンジー ナイチンゲール
キュリー夫人 エジソン カーネギー 野口英世 二宮尊徳
『大人のための偉人伝』というコンセプトだから、一面的な評伝ではない。と言って、対象人物を貶めているわけではなく、「偉人」としてリスペクトしつつも、人物像の陰影を伝えている。「この人物は、なにゆえに『偉人伝』に取り上げられるようになったか」を論じた評伝とも言え、そこが面白い。
この10人のなかで、私は「リンカーン」が一番面白かった。同時代の評価と後世の評価とのギャップ、その両方にいく分かずつの真実が含まれていると思われるところに、偉人伝発生のキイが見えてくる。
◎偉人リストの変遷
『大人のための偉人伝』によれば、子供向き偉人伝には2横綱(野口英世、エジソン)4大関(リンカーン、キュリー夫人、豊臣秀吉、ナイチンゲール)という相場があるそうだ。
この6人のうち、野口英世と豊臣秀吉が朝日新聞出版の50人から落選している。豊臣秀吉は木原氏の『大人のための偉人伝』からも漏れている。また、木原氏が取り上げた10人のうちシュワイツァー、カーネギー、野口英世、二宮尊徳の4人が朝日新聞出版の50人に入っていない。
偉人伝は定番を維持しながらも、時代とともに少しずつ変遷していくもののようだ。
かつての横綱・野口英世が不採用になったのは、やはり、その業績の大半が現在では否定されているからだろう。
豊臣秀吉と織田信長のどちらを取るかの選択では、昔なら秀吉だったが現代なら信長、という気分も何となくわかる。
私の世代にとっては偉人の代名詞のようだったシュワイツァーも過去の人として忘れられつつあり、マザー・テレサの方がスター性がありそうだ。
その時々で、自分自身のための偉人伝リストを考えてみるのも一興だと思った。
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