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現代の目から見て本書にツッコミ所が多いのは当然だが、ユダヤ人に関してヒトラーとほとんど同じユダヤ人観を展開しているのには少し驚いた。日本人にとってユダヤ人は遠い存在で関心も薄かったと思っていたし、満州ではユダヤ難民を受け入れる計画があったとも聞いていたからである。
武藤氏はソ連共産党も米国資本主義もユダヤ人が背後で操っていると述べ、欧州大戦(第一次大戦)を始めたのも終わらせたのもユダヤ人の指揮によるとしている。ユダヤ人は「戦争を起こさせる運動」と「反戦運動」の両方を操って利益を上げているという雑駁なユダヤ陰謀論である。
本書がユダヤ人問題を重視しているのは、極東ハバロフスク近傍でユダヤ人国家の建設が進んでいるからだそうだ。パレスチナではアラブ人の反発が大きく、極東でユダヤ人国家が出現することを警戒しているのである。
私には初耳の話で驚いた。調べてみると、根拠のない話ではなく、スターリンは極東にユダヤ自治州を作ったそうだ。現在、そこにユダヤ人はほとんど住んでいない。
本書が当時の日本国民にどの程度の影響力があったのかはわからないが、戦前の空気の一端に触れた気分になった。それは、始めた戦争は勝たねばならぬという、どうしようもない好戦の空気である。気をつけねばならない。
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